風邪をこじらせひとりおもうことは
くず湯的なものが飲みたくて台所を漁ったら、梅昆布茶が大量に余っていた。
梅昆布茶とはいついかなる時も余るものだ。
寮にいた時も梅昆布茶は冬場重宝したけれどやっぱり余って湿気らせてた。
ところで今冬初めて風邪をひいた。
わたしはわりと常に健康な人間で、ふだんの血色の悪さとか骨格の小ささとかテンションの低さとかで弱々しく見られるわりにかなり体はじょうぶである。今年も最近に至るまでずっと風邪っぽさとは無縁で、周りがインフルエンザとか胃腸風邪とかでバタバタ倒れる中、平然としていた。
あまり雪の降らない地方の人間が稀な大雪にあわあわするのと同じように、普段健康な人間が風邪をひくとちょっとの症状でもいやになってしまう。
当然、どんな体調であれ周りの人はいつも通りのわたしを期待するし、わたし自身もいつも通りでありたいと思うのだが、鼻から蛇口のように水が流れ出てくるものだからいつも通りでなんていられない。
鼻をすすり、鼻をかみ、それでもきりなく流れ出る鼻水に業を煮やして鼻の穴にティッシュをねじこみ始めたわたしをバイト仲間の女子大生(かわいい)はどう思ったろう。
わたしはネット上ではふざけたことも言うけれどリアルでは至極真面目な人間だと思われている。小学生の頃の文集の「おしとやかな子」ランキングでは堂々一位を飾ってたくらいだ。
他人の目に映る自分像なんてとってもとっても適当なものだ。うんこ。
話が逸れた。
どういう理由かはわからないけれど、一般的な風邪の症状は夜になると悪化するらしかった。今回もそうで、昼間困るのは鼻水くらいでそれ以外はけろっとしているのだが、夜になるとにわかに微熱が出る。
夜ご飯を食べてすぐ布団に入り電気を消すとなんだか悲しくなった。
いつもは真っ暗で眠るのに、豆電球をつける。豆電球の光は子供の頃を思い出させる。いつから「子供の頃」なんて表現を使うようになったんだろう。わたしの中のある部分はまだずっと子供のままでいられていると信じたい。
そんなことを考えながら眠りに落ちる。
大人になると、健康で居続けることの難しさ幸運さを思わざるを得ない。
10代の頃の高波が今は静寂の海。
その波が運んでくるものは大抵ろくなものじゃない。
わたしの身だけじゃない、わたしの大事なあの人この人に、なにかろくでもない病気が突然やってくるんじゃないかって、そういう漠然とした恐怖を最近ずっと感じています。
その恐怖からはおそらく一生逃げられないんだ。本当にそれがやってくるまで。
深夜目を覚ましたらメールが届いていた。大学時代の同じ学科の子の祝報。
結婚おめでとうの文面を考えながら、この先の途方も無い人生のゆくえとか、
ろくでもないことへの恐怖とか、そういう中でいつでも自分のすぐそばにいて守ってくれたり逆に守ってあげたりする人の存在はとても心強いものであろうな、と。
そう考えると結婚もそんなにわるいものじゃないなと、思ったのでありました。
縁さえあればね。